先日、赤坂見附にある行きつけの和食店のオーナーと広告代理店の友人と食事をしている時のことでした。初めて3人で会う中で、何を話そうかと考える間も無く「それでお店をどうしたいの?」とストレートに聞いている私がいました。そのオーナーと知り合った頃はまだ1店舗しかなかったのですが、今は赤坂と銀座に4店舗を持つオーナーになっています。その彼と未来を創作したいと思ったところから出た質問でした。
彼はいきなり直球が来たので戸惑った感じでしたが、少し間を置いてから「お客様と会って話をするのが大好きなんです」と言いました。10年以上付き合いがある中で店も増え、彼が本店にいないことが珍しくなくなった今、取り組んでいるのは従業員の育成でした。
それを聞いて思わず出た言葉は、「君は負けてもいいと思う」でした。
彼は勝ち続けてきた店のオーナーだから、従業員の誰よりも頑張っています。その頑張りは、自分が頑張らなかったら、お店はどうなるのかという不安と恐怖心から出てきているように見えました。
 
 私もIrohaで一昨年までは、結果を出さなければと頑張っていました。その時には気づかなかったのですが、不安と恐怖心に駆られて張り詰めている状態でした。知っている方も多いと思いますが、今はうお座の時代からアクエリアスの時代に入っています。カリスマリーダーに従うのではなく、自分が誰かを知り、それぞれがリーダーとして自立し、グループワークで達成を創る時代です。それに気づいた時に、「新しい時代を担うリーダーを育てる」と私は決めました。
すると自分が頑張らなくても、スタッフたちが自らリーダとして育ち始めました。全員がそうなっている訳ではありませんが、自分が頑張らないようになってゆとりができ、周りが見えるようになり、結果スタッフたちが自立していくようになった気がします。
 
 話は戻りますが、彼のお店に来る常連客は、彼に会いにきているのを知っているので、彼がいなくてもお客様が満足するよう一生懸命接客時の対応をスタッフに教育しています。しかし彼のコピーをいくら作っても、彼ではないので常連客は満足していないのです。
そこで「君はスタッフたちの長所を生かして、彼らにしかできない接客をのびのびできる場をつくったらいいと思う」と言ったら、彼は何か掴んだようでした。

 頑張って勝ち続けてきた体験をいったん脇に置いて、周りにいる社員一人ひとりを観察し、各々の長所を伸ばせる経営者であったら、店はもっと伸びるに違いありません。
成功体験はもっともっと勝ちたいと思わせる場合があります。そうすると時として部下が萎縮し、本来の力を発揮することなく辞めてしまうことがあるかもしれません。今この新しいアクエリアスの時代では、カリスマリーダーに従っていくのではなく、一人ひとりが既にリーダーとして、自分が誰として在るのかを明確にすることが大切です。
だからこそ、自分が頑張るのではなく、スタッフを「リーダとして現わせる」リーダーが求められているのです。
  
 一緒にいた広告代理店の友人が、楽しそうに彼を見る眼差しがとても温かく、その友人の中にある人を育む喜びが私にじわじわと伝わってきました。



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